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【木管】木部の割れと対策について

2021.02.02クラリネットオーボエリペアよくあるご質問

こんにちは! セントラル楽器 岸本です。

まだまだ寒い日が続きますね。

木製の管楽器にとっても嫌な季節になってきました。

そう、木部の「割れ」の季節です。

 

そもそも管楽器って割れるの?
割れたらどうなるの?
割れないようにするには?

今回はそんな疑問にお答えします。

 

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【目次】

 ・木管楽器って割れるの?

 ・なぜ割れてしまうのか?

 ・もし割れてしまったら?

 ・割れへの対策は?

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木管楽器って割れるの?

残念ながら、木製の楽器であれば演奏している限り割れる可能性があります。

これは半ば仕方のないことで、割れてしまったからと言って不良品というわけではありません。
どんなに高級な楽器でも、どんなに大切に扱っていても、割れるときは割れてしまうのです。

↑木の木目に沿って少しずつ割れてきます。

割れのリスクを回避するため、木材ではない素材を使ったモデルも存在します。

主な素材として、「ABS樹脂」や、「エボナイト」、クランポンさんの「グリーンライン」、パールさんの「グラナディッテ」などが挙げられます。

素材についての詳細はこちら↓

グラナディラ クラリネット・オーボエ・ピッコロなど木製の管楽器の素材として代表的な木材。
アフリカンブラックウッドともいわれます。比重が重く硬い。
ABS樹脂 アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンからなる合成樹脂。

俗に「プラ管」と呼ばれる楽器はこの素材を使っているもの。

エボナイト 天然ゴムに硫黄などを混ぜて加工した硬化ゴム。

木管楽器のマウスピースにも使われる素材。

グリーンライン ビュッフェ・クランポングループ独自の新素材。

粉砕されたグラナディラにカーボンなどを練りこんで再合成したもの。

グラナディッテ パールフルートのピッコロに使われる独自の素材。合成樹脂。

また、ヤマハさんから楽器の外面はグラナディラ(木)・内面は樹脂製というハイブリット型「デュエットプラス」シリーズも販売されています。

木製の楽器とは音色もだいぶ異なります。気になる方はぜひ吹き比べてみてください。

 

なぜ割れてしまうのか?

主な原因は「外気との温度・湿度の差」です。

管楽器に使われる木材は、温度・湿度が高いほど膨張し、低いほど収縮します。

 

管楽器は、管に息を入れて演奏する楽器です。

演奏中、管の中にはあたたかい息が入り、外気との温度差で結露し水分が溜まります。
この際、温度・湿度ともに高い状態で、木材は膨張しようとします。

 

一方そのころ、管の外側は外気にさらされています。
冷たく乾燥した(温度・湿度の低い)空気にあたり、収縮しようとします。

 

膨張しようとする内側と、収縮しようとする外側。
このギャップで木部が割れてしまいます。

 

また、トーンホール(管に空いている穴)に溜まった汚れも原因の一つ。
クラリネットのキイを外してみると、トーンホールの中に汚れが溜まっているのが見えます。

割れのリスクが高まり、音程や音の抜けが悪くなる原因にもなります。
定期点検や調整の際に合わせてチェックしてもらいましょう。

    :そうじ後   :そうじ前(奥に汚れが見えます)

 

もし割れてしまったら?

よっぽど大きな割れでなければ、当店で修理が可能です。

 

作業内容は割れている具合によりさまざま。

  • 割れている箇所を埋める。
  • 金属製のピンで割れ目を鉸める。
  • 管体そのものを交換する。
    …など、割れの様子を見て適切な作業を行います。

 

木部の状態を見ながら作業いたしますので、通常の修理よりもお時間をいただきます
(当店の保証が付いている楽器は1週間~。他店でご購入の楽器は2週間~。)

 

割れの具合によってはメーカーへ修理を依頼する場合もあります。
お返しまでに1か月ほどかかることもありますので、スペアの楽器を借りられるようであれば用意しておきましょう。
また、メーカーの保証書をお持ちの方は、合わせて用意しておくといいかもしれません。

 

割れの修理は状態によって納期・金額ともに変わってきます。
まずは受付でご相談くださいね。

 

割れへの対策は?

修理できるとはいえ、時間がかかるという事がわかりました。
なるべく割らないように過ごすにはどうしたらいいのでしょうか?

主な原因である「温度・湿度の差」を意識して対策しましょう!

 

吹き始めはやさしく丁寧に!

楽器が冷えたままの状態で、いきなりあたたかい息を吹き込むと、木がびっくりしてしまいます。
やさしく管を握って、楽器を外側からあたためてください。
吹き口に近い部分からあたためると、さらによし◎

※「外側からあたためる」といっても、ホッ〇イロを直接貼り付けたり、ストーブの前に置いておくのはNGです。
表面の塗装に悪影響が出たり、調整が崩れる原因になります。

 

こまめにスワブを通すべし!

今まで以上にこまめにスワブを通しましょう。
5分に1回を目指してください。

急いで通すと管の中で詰まってしまう事があります。
スワブはきちんとのばしてから、ゆっくり通しましょう。

え?指揮者の先生が厳しくて通す時間がない?
先生!合奏も大事ですが、皆さんの楽器も大切な宝物です!ご配慮ください!

 

見逃さないで!トーンホール&ジョイント部

きちんとスワブを通していても、トーンホール(管に空いている穴)とジョイント部分に水分が残っていることが多いです。

トーンホールに残った水分は、クリーニングペーパーを使って除去してあげましょう。
汚れが溜まっていないか、定期的にチェックしてもらうとより安心です。

また、バレルと上管の間、上管と下管の間、下管とベルの間、など
管同士がジョイントする部分は、木が水分を吸いやすく膨張しがちです。
演奏が終わった時や休憩に入る時など、ジョイント部分に残った水分は、分解してティッシュなどで拭き取りましょう。

 

冷たい空気に晒さない!

管の内側も外側も十分あたたまった楽器を外へ持ち出すと、管の外側から急激に冷えてしまいます。
楽器を持ったまま部屋を移動する際は、
冷たい空気に直接当たらないように、クロスで包むなどして守ってあげてください。

 

木製の管楽器を製造する際は、原木である木を伐採し、十分乾燥させた状態から加工します。
新品の楽器はまだ「演奏される状態」の湿気や気温に慣れていません。
赤ちゃんのようにとってもデリケートです。
手間はかかりますが、ゆっくり向き合ってあげてください。

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