修理道具のご紹介 ~木管楽器バランス調整編~
2021.01.05フルートクラリネットオーボエファゴットサックスリペア
みなさんこんにちは、セントラル楽器の岸本です。
今回は、普段あまり見ることのない修理に使う道具を一部ご紹介します。
「修理」といっても様々ありますが、今回は木管奏者なら一度は耳にする「バランス調整」という作業に使われる道具たちです。
早速ですが、まずはこちら。
何に使うものでしょう…?
私たちは「フィラー」と呼んでいます。
木管楽器の、タンポの閉じ具合を確認するために使うものです。
タンポとトーンホールの間に挟み、隙間がないかどうかを調べます。
楽器の種類や状態によって、さまざまな素材・形のものを使い分けています。
同じく、タンポの閉じ具合を確認するための道具がこちら。
「リークライト」と呼ばれる道具です。
タンポひとつひとつの閉じ具合を見るときや、連動する複数のキイのタンポが同時に閉じるかを確認するためにも使用します。
こちらも楽器の種類・状態によって、明るさや色を使い分けています。
タンポとトーンホールの間に隙間があると、そこから息が漏れて吹きづらく感じることが多いです。
隙間ができる原因はいくつかありますが、多くはタンポの収縮・膨張によるもの。
外的要因がなくても、少しずつ隙間が出来てしまいます。
(タンポについての詳しいお話はこちら)
隙間をなくすためには、タンポひとつひとつを細かく調整する必要があります。
では、どのように調整するのかというと…。
このようなヘラを使用します。
大小さまざまありますが、修正する箇所に合わせた厚さ・大きさ・硬さのものを使用します。
タンポとキイは、「ラック」と呼ばれるホットボンドのような接着剤で留まっています。
普段はかっちり留まっていますが、熱を加えるとラックが溶けて、ふにゃふにゃになります。
調整する際は、該当するキイのカップ(タンポが入るお皿の部分)をバーナーで炙って接着剤を柔らかくし、ヘラを使ってタンポの角度を整えます。
この接着剤の特性こそ、木管楽器が熱に弱い理由のひとつです。
暑い場所に長時間置いておくと、接着剤が溶けて調整が崩れてしまうことがあります。
特に、オーボエ・クラリネットは融点の低い接着剤を使っていることが多いので注意が必要です。
もちろん調整以外にも悪影響が出ますので、置き場所には気をつけましょう!
使われている接着剤は、メーカーや楽器ごとに硬さ・融点が違うので、修正する箇所に合わせて火の強さや熱する時間、必要であれば接着剤の量を調整しながらタンポを整えていきます。
(熱しすぎるとタンポが収縮して使えなくなってしまったり、接着剤がカップの外まで溶け出してしまったり、楽器表面の塗装が変色してしまったり…。気の抜けない作業です…!)
また、フルートの場合は少し違った方法で調整をします。
フルートのキイは、接着剤の代わりにネジを使ってタンポを止めています。
では、微調整はどうするのかというと…。
なんと、紙です。
薄いものはなんと0.015mm!
厚さの異なる紙を使って調整していきます。
↑全て厚さの違う紙です。フィルムのような素材を使うモデルもあります。
隙間を見つけたら、その大きさに合わせて紙を切り、タンポとカップの間に入れて調整します。
ネジを止める際の力の入れ方・タンポの押さえ方等によっても閉じ具合が微妙に変わってしまうので、
細心の注意を払いながらタンポを外し、紙を入れ、取り付けて状態を見て、隙間があればまた外し、紙を入れ…。繰り返しこの地道な作業をします。
他にも、タンポ表面の皮の処理や、タンポ全体がカップからどのくらい出ているか…など、気にすることは色々あるのですが…。
語りだすと止まらなくなってしまうので、今回はここまで!
これから修理に関する情報も少しずつご紹介しますので、ぜひご覧ください。